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第45回日本看護学会―ヘルスプロモーション―学術集会



開会式    第45回日本看護学会−ヘルスプロモーション−学術集会が8月28‐29日,高島和歌子学術集会長(熊本県看護協会会長)のもと,熊本県立劇場(熊本市)で開催された(参加者数:28日1039人,29日931人)。メインテーマを「火の国発(初)健康な社会の創造 つかむ!すべての人々の健康を つながる!看護の力で」としたこの学術集会は,日本看護学会の領域が従来の10領域から7領域へ統合・再編成されて開催される今年度の日本看護学会の初回となる。「ヘルスプロモーション」は今回の統合・再編成により初めて提示された領域であり,実際にどのような演題が発表されるのか関心が持たれた。演題は,地域包括ケアシステムや妊産褥期の母親支援を中心に,認知症看護や健康教育など多岐にわたった。
 ここでは,特別講演とシンポジウムのもようを紹介する。

◆誰もがみな健康的に暮らせる社会へ

 初日に行われた特別講演「ヘルスプロモーションの起源と歩み〜日本の近未来への提案〜」では,島内憲夫氏(順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科教授)がヘルスプロモーションの定義と変遷を振り返り,健康生活習慣づくり(個人的アプローチ)と健康生活の場づくり(社会的アプローチ)を推し進めながら健康的な公共政策を確立することが,ヘルスプロモーションの究極の目標「人々の真の自由と幸福」につながると解説。日本の近未来への提案として,@ヘルスプロモーションの再考,Aヘルスプロモーションのコアとなる学問(健康医学〈疫学〉・健康心理学・健康社会学)と周辺の学問(コミュニケーション・マーケティング・社会政策・経済学など)の連携・協働,B有機的な産官学民の連携・協働による具体的なヘルスプロモーション活動を一生涯において,あらゆる生活の場で取り組むこと,C明日のヘルスプロモーションを背負う次世代育成が必要であると述べた。

シンポジウム「健康な社会の創造を目指して,ヘルスプロモーションを共有し,つながろう」    2日目に行われたシンポジウム「健康な社会の創造を目指して,ヘルスプロモーションを共有し,つながろう」(座長=荒木紀代子氏,熊本県立大学総合管理学部教授)では,看護職が様々な場で行っているヘルスプロモーションの実践報告が行われた。
 豊富な国際保健活動経験をもつ今村尚美氏(熊本赤十字病院子ども医療センター師長)は,被災地で育成したトレーナー(現地の看護師やボランティア)が地域住民に働きかけ,住民自らが活動に参加することで健康問題が改善していくプロセスを報告。非常時においても住民(コミュニティ)へのエンパワメントは重要であると述べた。
 桑江喜代子氏(沖縄県助産師会会長)は,県の補助金1億円を基に設立された助産師の活動拠点,母子未来センターの活動を紹介した。同センターは,「産後の継続的ケア支援が不十分である」という県内母子保健の問題に対し,環境の整備やシステムづくりを目指す。離島・へき地への巡回妊婦健診や助産師の人材育成,他職種との定期的な交流を通じて,助産師の質向上と母子保健の充実を図っている。
 住民組織主体で展開している健康づくり活動を報告したのは,秋好満重氏(大分県玖珠町福祉保健課健康推進係長)。各自治区からの選出による保健委員で構成された「玖珠町愛育健康づくり推進協議会」が,健診受診の呼びかけやビラ配布を行った結果,受診率対前年比10%向上の効果を挙げたという。さらに,地域の実態調査から世代別の健康問題を抽出し,その結果を生かして学習会やイベントを開催するなど,健康なまちづくりを推進している。
 オレンジホームケアクリニック(福井市の在宅医療専門クリニック)所属の看護師内山絵理氏は,2013年7月福井駅前に開設した「みんなの保健室」の取り組みと課題を紹介した。当施設は,専門職が無料で住民の健康相談に対応するだけでなく,出張健康相談や出前ワークショップ,認知症カフェなども展開する。運営資金はクリニックに拠っているため運営体制に課題を抱えつつも,認知症カフェが市の委託事業となるなど行政のバックアップや住民の認知も得られるようになっており,他都道府県での展開に向けて期待を寄せる声が会場から挙がった。
 次回は,来年11月6-7日に富山県民会館(富山市)での開催が予定されている。
(編集部書籍課・名取)