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第46回日本看護学会−精神看護−学術集会




   第46回日本看護学会−精神看護−学術集会が、9月18-19日に大阪府大阪市の大阪国際会議場(グランキューブ大阪)にて、伊藤ヒロコ学術集会会長(大阪府看護協会会長)のもと、「精神(こころ)と向き合う看護?なにわ発、人間やから複雑やねん?」をテーマに開催された。1500名以上の参加者を集めた当学術集会では、複雑な人間の精神(こころ)を読み解くため、多様な視点からプログラムが組まれた。
 ここでは、教育講演Tおよび特別講演Uの内容を紹介する。


◆薬物依存の背景にはいったい何があるか

 教育講演Tで「薬物依存への看護?ドラッグ問題をどう教えるか?」をテーマに登壇した寶田穂氏(武庫川女子大学看護学部看護学科教授)は、「ドラッグ問題を教えるためには、ドラッグ依存症者を理解し共感する必要がある」と述べた。
 ドラッグ問題は新聞やテレビなどでニュースとして報じられる場面が多く、一般的に依存症者には「犯罪」と関連したイメージが強い。しかしながら、依存症に至るまでの患者の背景には、孤独や孤立無援、生きづらさ、貧困、ネグレクト、精神の健康問題など、依存形成を成す要因が存在している。ドラッグ問題をとらえるためには、この依存症者が依存にいたる背景にこそ目を向けるべきであるとした。
 また同氏は、精神科の看護師と患者へのインタビュー調査の結果から、看護活動を通じて看護師自身も「傷ついている点」を指摘。ケアにあたる看護師が積極的に患者を理解し共感しようとするあまり、なかなか理解されない現状にストレスを抱えてしまうことがある。これは患者のネガティブな感情に看護師自身も無意識の対称性をなしてしまうためであり、こうした悪循環が生まれることで、結果として看護の質も低下してしまう。この課題を克服するためには、実際に現場に立つ看護師に対してドラッグ問題を教える前に、まずは教える側がケアにあたる看護師自身の気持ちを理解する姿勢が必要であり、看護師自身が「ケアされる」体験をとおして患者へのケアへと活かす、「ケアの連鎖」を生み出すべきであると述べた。

◆「悲劇の台本」を書き換える

 特別講演Uで「劇的な精神分析入門?臨床を劇として見る?」をテーマとして登壇した精神科医であり作家でもある北山修氏(九州大学名誉教授・白鴎大学副学長)は、「臨床の現場を劇としてとらえること」を提案。生活や仕事の場など日常生活の様々な場面を劇でいうところの「舞台」と見立て、それぞれの「舞台」に適応するための行動原理として「台本」が存在する点を指摘した。
 精神科の場で出会う患者は、それぞれの「舞台」において「うまく振舞えていない」「うまくその場に上がれない」ため、「舞台」の中身が「悲劇」となってしまいがちである。そんな患者の「悲劇」に変化を与えるためには、悲劇の舞台の「台本」を読み、その「台本」を書き換えることこそ重要だと氏は訴える。
 看護の場では、看護師も「看護師」という役割を演じる「演者」であるため、「舞台」に出演する一方で、管理者として冷静に患者のことを観察しなければならないところに難しさがある。まずは看護の場で用いる前に、看護師自身が自分の「台本」を読むこと、また自身が「舞台」に出演する体験をとおして学習することを勧めて講演を締めくくった。

 次回、第47回日本看護学会?精神看護?学術集会は、2016(平成28)年9月15?16日に青森県青森市リンクステーションホール青森にて開催が予定されている。

(編集部書籍課・山本)