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第47回日本看護学会―看護教育―学術集会




テレビでもおなじみの池田氏の講演に多くの参加者が熱心に耳を傾けていた
   第47回日本看護学会―看護教育―学術集会が、8月4〜5日に滋賀県大津市のびわ湖大津プリンスホテルにて、石橋美年子学術集会会長(前滋賀県看護協会会長)のもと「湖国滋賀から発信!「未来をひらく看護教育」」をテーマに開催された。
 初日1,745人、2日目1,478人を集めた当学術集会では、地域包括ケアシステムを踏まえた人材育成、実習指導、医療安全に関する演題が目立った。
 ここでは、基調講演、特別講演およびシンポジウムTのもようを紹介する。


◆看護基礎教育4年制とクリニカルラダーの開発

 基調講演で「未来をひらく看護教育」をテーマに語った坂本すが氏(日本看護協会会長)は、残り1年の任期で看護教育に関する取り組みとして基礎教育の見直しおよび「看護師のクリニカルラダー(日本看護協会版)」の普及に力を入れていくと述べた。基礎教育については、日看協として2006(平成18)年から4年制としていく考えを示しているが、すべてを大学教育にするという意向ではないことを明言。今年5月厚生労働省に、看護師養成の教育年限を4年とするよう訴える要望書を提出したことや、すでに4年制となった看護専門学校があるといった点にも言及し、安心・安全な医療の提供ができる看護職の育成を目指していく方針を示した。
 また、今年5月に公表された「看護師のクリニカルラダー(日本看護協会版)」については、すべての看護師に共通する能力を示すものとして看護実践能力に焦点を当てて開発したと述べた。ラダーの基準やレベルは施設により異なるため、日看協が統一した見解を示すことで、看護師一人ひとりの看護実践能力が明らかになるようにし、現場での人材育成や中途採用の際に役立てていただきたいと参加者に対しアピールした。

◆経験知に基づくケアをどのように教育するか

 特別講演では、「変革する時代を担う次世代専門職を育てる」をテーマに、池田清彦氏(早稲田大学国際教養学部教授)が、言葉では伝えにくい経験知によるケアを伝える方法について語った。ある患者に病名が付けられた際に、その病名にしたがって治療やケアが施されるが、それがその患者にとって必ずしも最善な医療の提供であるとは限らないと発言。同じ病名であっても個々の患者により、薬の効き方も違えば回復に差が出ることもあり、一人ひとり病態に差があることに注目すべきと述べた。しかし、それらを踏まえたケアは言語化されていないため、教える者は自分の経験知だけで語ることになる。そこで、氏はシャドウイングおよびその患者のこれまでの人生をみていくことが重要であると主張。教える側が経験してきたケアの方法を体験してもらうと同時に、個人差を明らかにするために患者がこれまでどのような生活を送ってきたのかなどを確認していく必要性を説いた。

◆新卒訪問看護師の育成を実践例から考える

 シンポジウムTでは、勝又浜子氏(日本看護協会常任理事)が座長を務め、「地域包括ケアシステム時代の人材育成」をテーマに、大学、訪問看護ステーションにおける取り組みが紹介された。
 輿水めぐみ氏(滋賀医科大学医学部看護学科講師)は、2014(平成26)年より、卒前教育のプログラムである、「訪問看護師コース(選択制)」の検討委員となり、自身の訪問看護師としての経験を生かしながら学生への教育を行っている。このコースは、卒業に必要な単位数には含まれないが、同大附属病院の専門看護師や訪問看護ステーションの協力を経て、学内外での演習・実習を充実させている。また、滋賀県看護協会の「新卒訪問看護師育成プログラム」を卒後教育に位置づけ、訪問看護ステーションとの連携体制を構築し、学生を現場の力で訪問看護師として育成している。今年、このコースを選択した学生は7名で、訪問看護への関心が高く、コースを受講したことで将来の働き方を考えるきっかけとなっていたと語った。
 椎名美恵子氏は、自身が所長を務める訪問看護ステーションみけ(東京都墨田区)が、「東京都訪問看護教育ステーション事業」において教育ステーションの指定を受け、新卒を含む訪問看護師の育成に尽力していると述べた。同ステーションでは、新卒看護師、潜在看護師、障がいを抱えた看護師の採用実績があり、その育成のため地域で生活する人々の現状を他職種や地域住民から学ぶことを中心に、より高い看護観、より深い専門性の追求ができるようにしている。また、ICTの有効活用や利用者情報のクラウド管理により、急変時でも現場でスムーズな看護の提供が可能であることを紹介。今後は、行政と協力しながら地域性を踏まえた研修を継続し、看護師の地域包括ケアへの意識格差や看護の質格差の解消を促していきたいと述べた。

 次回の第48回日本看護学会―看護教育―学術集会は、2017(平成29)年8月3〜4日に香川県高松市のサンポートホール高松にて開催される予定。

(編集部書籍課・中村)